不動産投資の留意点

今回から「不動産投資の留意点」をシリーズで解説します。

 

投資用不動産を取得する際の名義は誰にするかによって相続税対策の効果に差が生じます。

そのため、投資用不動産を取得する場合、個人名義法人名義かの選択は重要です。

それぞれ一長一短があり、取得する者の年齢や健康状態、相続税対策が主目的であるのか否かなどによって最適な名義の選択が異なることになります。

名義選び

 

①個人名義

投資用不動産を取得した直後に相続が開始しても、時価と相続税評価額の差額によって相続税が軽減されます。ただし、 相続開始直前に多額の借入金によって取得した場合、時価によって評価されることがあります(評基通6)。

また、賃貸不動産の場合には、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を選択することができます。ただし、相続開始前3 年以内に賃貸不動産を取得した場合には、一定の制限があります(措法69 の4③四)しかし、賃貸不動産取得後、長生きすると賃料収入などによって財産が増加し、相続税の軽減効果は徐々に縮減することになります。

 

個人名義のイメージ

 ②法人名義

投資用不動産を取得しても3 年以内に相続が開始すると、法人が取得した不動産は「通常の取引価額」によって評価することとされているため、時価と相続税評価額との差が小さいことから、相続税の大きな軽減効果は期待できません。しかし、法人で不動産を取得して3 年を経過したら、法人が所有する不動産は、財産評価基本通達によって評価することができるので、不動産の評価額が大きく下落し、自社株の純資産価額はゼロになったりすることがあります。その場合 に、そのタイミングを捉えて子や孫へ無税で自社株を贈与することができます。

また、複数の会社でそれぞれ物件を取得して、それぞれの会社の株式を特定の相続人に生前贈与するなどの方法によって、生前に遺産分けを実現することもできます。

さらに、自社株の贈与をしておけば、長生きしても賃料収入は法人の収入となることから、贈与後に自社株の相続税評 価額が値上がりしても相続税の軽減効果は失われません。その上、倒産防止共済に加入すると、掛け金を支払った際に損金算入され、最高 800 万円まで支払うことができます。その掛け金は40ヶ月以上掛けて解約すると掛け金の全額が還付されます。その際はその法人の益金に算入されます が、大規模修繕を実行して修繕費と相殺するなどの対応が考えられます。

 

法人名義のイメージ

 

③支配すれども所有せず

内閣総理大臣・田中角栄との関係が「刎頸の友」と言われるなど有力な政商として知られた小佐野賢治(国際興業グル ープ創業者)の総資産は、一時10 兆円を超えるとも言われていて、小佐野賢治は生前、自分の財産がいくらあるのか知 っているのは税務署ぐらいだと豪語していました。しかし、小佐野賢治の相続財産の総額は60 億円ほどで、国際興業に ほぼすべての資産を入れていて、小佐野賢治個人としては資産をほとんど持っていなかったからのようでした。このことから分かるように、個人で直接資産を保有することなく、間接的に保有する方法で支配すれば相続税は驚くほど軽減することができます。

小佐野賢治ほどの資産がなくても、その手法をお手本に相続税対策ができます。具体的には、不動産管理会社を設立して、高収益な賃貸不動産を個人の直接所有から同族法人を通じた間接所有にします。そして、その同族法人の株式を子や 孫へ生前に贈与しておきます。その場合のポイントは、株式の大半を子や孫へ贈与しても、議決権は確保する仕組みを作っておくことです。

株式会社であれば、株式譲渡制限会社(株式を譲渡する場合には、会社の定めた承認機関で譲渡承認を必要とする)で は、定款の定めによって1株=1個の議決権でなくてもよいとすることができます(会社法109②)。

そのため、例えば、父が所有する株式には、1株につき100 個の議決権を与えると定款に定めておき、過半数の議決権を保有すること ができるようにしておけば、父は「支配すれども所有せず」を実現することが可能です。

また、種類株式を活用して子や孫へ贈与する株式は無議決権株式(会社法108①三)とする方法や、父は株主総会で決 議すべきすべての議案について、拒否権(会社法108①八)を有する「黄金株」を保有するなどの方法もあります。

 

不動産投資の留意点.pdf

(文責:税理士法人ファミリィ 山本和義)

税理士法人ファミリィ : http://taxfamily.or.jp/

カテゴリ

新着記事

ご登録いただいた方には、最新の物件情報をメールでお届け!
物件の売却をお考えの方もお気軽にお問い合わせください